納棺師

納棺師になって実際に感じたやりがいや辛いこと

実際に納棺師をしてみると、一般的な仕事では感じる事ができない大きなやりがいを感じる事ができますが、その一方で辛い気持ちになることも多いです。

今回の記事では、私が納棺師をしていた際に感じた「納棺師としてやりがい」と納棺師をして辛いなと感じた事を紹介します。

一般的な仕事とはまた違った思いを感じる事ができるので、納棺という業務に興味がある人はもちろん、これから納棺師を目指す人はぜひ参考にしてください。

この記事でわかること

・納棺師になって実際に感じたやりがい
・納棺師をして辛いと思ったこと

納棺師とは

納棺師は亡くなった人のメイクをしたり、傷口などを塞いだりして身体を整える仕事です。
お葬式の前に行われる納棺式の司会を行うこともあり、亡くなった人と遺族の間に入って旅支度のお世話をします。

納棺師になって実際にやりがいを感じた場面

納棺師としてのやりがいは、亡くなった人と遺族の関係に触れる事ができるといった「気持ちに触れるやりがい」で、納棺師をしていてよかったと思わされる事が多いです。

メイク終了後に「まるで寝ている見たい」感謝された時

納棺師の仕事として代表されるのが、亡くなった人へのメイク。

亡くなった人の中には、闘病生活などで顔色が変わってしまったり顔がやつれてしまい、元気な頃とは違った顔つきで亡くなられてしまう方も多いです。

遺族にも「こんな姿になってしまって・・・」といった悲壮感が強い中、亡くなった人の元気だった頃の写真を参考にメイクを行うと、遺族の方に「元気な頃に戻った」とか「まるで寝ているみたい」と涙を流しながら喜んでもらえる瞬間に何度も立ち会う事ができました。

亡くなった人の顔というのは皮膚の状態が悪いこともあり、とても整える事が大変ですが、メイクが終わった後に遺族の方から言葉にならない程の気持ちを感じると、業務の苦労が報われたような感覚になり「やってよかった」と納棺師としてのやりがいを強く感じます。

納棺式などで亡くなった人と遺族の思い出を聞いた時

お葬式の前に行われる納棺式では、亡くなった人をひつぎに移し、最後に副葬品(亡くなった人の思い出の品など)を納めます。

この時に「本が好きだったんですね」といったちょっとした会話を挟む事で、遺族の方が「そう。いつも本を読んでいたんですよ。」と、亡くなった人との思い出や人となりを教えてくれる事があり、納棺師として遺族と亡くなった人との間を改めて感じられる事があります。

納棺式は時間に限りがあったり、様々なところに気を使いながら進行して行かなければなりませんが、遺族との会話などを挟む事で、納棺師自身が遺族や亡くなった人と一丸となり「有意義な納棺式ができた」と大きな達成感とやりがいを感じるのです。

納棺式の締めの挨拶が終わった時にその大きな達成感を噛み締める事ができ「いい仕事ができた」と自分自身が報われたような感覚を味わえます。

納棺師の業務中は辛いことも多い

納棺師の仕事はとても大きなやりがいを感じますが、正直なところ「辛いなー」と感じる場面の方が多いです。

「死」というテーマに向き合うことはとてもメンタルに来ることで、中にはトラウマになってしまうこともあり、忘れることが難しいこともしばしば。

ここでは辛いことが多い納棺業務の中でも、私自身がいまだに忘れる事ができない事例をお伝えします。

匂いが脳裏から消えずトラウマになることも

納棺の仕事をしていた際に、何度か焼身自殺された方のメイクや清拭をすることがありました。

納棺師として水死体、事故死、腐乱死体などの様々な遺体状況をみてきましたが、自分の中では焼死体の方の匂いが印象的で、私の中では未だに脳裏に残っています。

不謹慎な話になりますが、焼死体の匂いはイナゴの佃煮のようなタンパク質を感じる独特なもので鼻に来るというよりは脳にくる感じでした。

この匂いを知ってからイナゴの佃煮を食べる機会はありませんが、きっとこれからも食べることはできないでしょう。

納棺師によって様々ですが、匂いというのは日常生活のちょっとした瞬間に思い出す事がありますので、匂いをきっかけに遺体を思い出すといったこともあり、トラウマとして長い間引きずってしまうこともあるのです。

子供を突然失った遺族の悲痛な涙が忘れられない

80代や90代といった年齢の方だと、本人や家族も寿命を考え始めますので「亡くなっても仕方ない」といった心情がありますが、子供や若い人が突然亡くなってしまうのは家族にとって信じられない出来事です。

私は一度だけ幼稚園児の納棺業務を務めたことがありますが、ご両親は一度も園児のそばを離れず、ずっと園児を見つめていました。

身支度が終わると名前を何度も呼びながら泣き崩れ、家族全員が悲痛の表情を浮かべていたのを私は今でも忘れられません。

納棺師の仕事は亡くなった人を送り出す仕事ですが、全ての人が寿命で亡くなるわけではないので、時には残酷な場面に遭遇することもあります。

納棺のプロとして心をみ出すことなく仕事をするのが大切ですが、時には悲しみで押しつぶされそうになることも多いのが実情なのです。

まとめ

納棺師のやりがいは、他の仕事では感じる事ができない特別な達成感によって生まれます。

様々な悲しみや辛いことを背負う事が多いですが、その辛さの分大きなやりがいを感じるのが納棺師。

納棺師として成長すればするほど、小さなところでできることも増えてくるので、納棺師を目指している人は辛さに負けることなくやりがいを感じてもらいたいです。

 

 

ABOUT ME
おてさら君
お寺生まれの長男坊。『仏教は哲学』をモットーに仏教の面白さを世の中に伝えるべく日々自己鍛錬中。ミャンマーやスリランカといったアジア国で上座部仏教の修行経験、日本では納棺師の経験を経ています。自分の煩悩の強さを感じながら『職業は僧侶』ではなく、『生き方が僧侶』を目指し、宗派に属さずお寺と俗世間の間で偏りのない仏教に関する情報を提供中。
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。