日本のお寺の敷地内には墓地がありますが、実はお寺の敷地内に墓地があるのは日本独自のスタイル。そこで今回は、なぜ日本のお寺の敷地内にはお墓が建てられたのか。その理由を紹介させていただきます。
・仏教におけるお墓の原点
・お寺の敷地にお墓がある理由
お墓の原点は仏舎利塔!?
仏教の祖であるお釈迦様の遺骨を分配し、納骨されている塔を仏舎利塔(ぶっしゃりとう)と言います。仏舎利塔は仏教のシンボルとしてだけでなく、信仰の対象ともされており、仏教においては一番最初のお墓とも考えられています。
①室町時代に始まる寺院墓地の元祖
仏教は平安時代に民衆に伝わりはじめ、室町時代には多くの仏教信者が多くいました。熱心な仏教信者の中には寺院を仏教の聖地と考える人もおり、亡くなってもお寺の側に寄り添いたい。お寺で供養されたいと願う人があったため、お寺の敷地内に土葬された方もいたとされます。墓石はありませんが、お墓の敷地内に埋葬されるという形は正に寺院墓地の元祖。人々が持ったお寺への思いからはじまったのが寺院墓地への最初の考え方なのです。
②寺請制度に生まれた寺院墓地に至る考え
江戸時代になると全ての人々が寺院の檀家になることを義務付けられた、寺請制度(てらうけせいど)が生まれました。寺請制度は江戸幕府によって作られたものであり、お寺の檀家になることで江戸時代に禁止されていた、キリスト教の信者では無いことを証明する目的があったとされます。
寺請制度の中には宗門人別改帳(しゅうもんにんべつあらためちょう)という現在の戸籍に当たるものが存在し、個人の出生から死亡時期、信仰している仏教宗派などの記録がお寺で管理され、檀家制度を通して人々の情報管理がされていました。
墓地による仏教徒であることの証明
寺請制度における檀家は仏教徒であることを証明するものです。もちろんお墓も例外ではありません。自分が関わるお寺によって建てられたお墓も、故人や遺族がお寺の檀家であったことを証明するものとされ、お寺の敷地内にお墓があることは宗門人別改帳の記録の一つと考えられたでしょう。
お寺と人々の盛んな交流
寺請制度によってお寺と人々の結びつきが強くなり、お寺では檀家のためのお葬式、墓参り供養などの様々な仏事が行われるようになります。多くの仏事、供養はお寺で行われるため、お墓はお寺に建てた方が仏事を円滑に進められると考えられました。
まとめ
お寺の敷地にお墓があることは現在では当たり前の風景となっていますが、お寺にお墓が建てられはじめた時代の人々には様々な思いがあったと推測できます。現在お寺の敷地内にお墓があるのは、日本人の特性と様々な時代交錯によって生まれた日本独自の文化ですので、日本の歴史を知る上でも貴重な存在。寺院墓地に行く際は歴史に思いを馳せながらお参りすると良いでしょう。
・お寺で供養されたい人々の願い
・寺請制度による檀家の管理目的
・お寺で行われる仏事、供養の円滑化