納棺師

納棺師(おくりびと)が仕事現場に持っていく道具と使い方を紹介!

納棺師は、遺体を綺麗に整えるために、様々な道具を仕事現場(遺体が安置されている場所)に持っていきます。

見た感じは、化粧箱と綿だけを持っているだけのように見えますが、化粧箱には納棺師ならではのアイテムが詰まっており、綿にも大きさによって使い方が違うという特徴が。

今回の記事では、納棺師が仕事現場に持っていく様々な道具と、その使い方を紹介していきます。「納棺師の化粧箱には何が入ってるのか気になる。」という人はぜひ最後まで読んでください!

この記事でわかること

・納棺師が仕事現場に持っていく道具の種類
・特徴的な道具の使い方

化粧箱にはメイク道具や傷口を防ぐ薬などが入っている

納棺師が持っている化粧箱の中には以下の道具が入っています

道具によっては意外な使われ方がされる物もあるので要チェック!

納棺師の化粧箱の中身

・清拭剤(体や顔を洗う物)
・ドライシャンプー
・剃刀(カミソリ)
・ゴム手袋
・ガーゼ
・包帯
・キズ口を塞ぐ塗り薬
・細い筆や太い筆
・ファンデーションやチークなどの化粧品

水を使わずに髪を洗うドライシャンプー

遺体をお風呂にいれる(湯灌(ゆかん))がない場合、納棺師はドライシャンプーを使用して遺体の髪の毛を洗います。

ドライシャンプーは、

・水を使わずに髪や頭皮を清潔に整えられる。
・髪の毛が早く乾燥するので、ドライヤーを使わなくて良い。

といったメリットがあるので、仕事の現場が常に変わる納棺師にとっては必須。

水の用意も必要ないので、時間をかけることなくすぐに作業を始められるのもポイントです。

清拭と産毛剃りに使う清拭剤

清拭剤は、身体を拭く時にはタオルに含ませ、皮膚に傷がつかないように身体全体を拭きますが、顔の産毛を剃る際はシェービングフォームとしても利用されます。

*清拭剤は普段原液で持ち歩き、仕事現場で少量の水と合わせて使われています。

顔の産毛などを剃刀(カミソリ)

顔の産毛剃りには、L字の剃刀(カミソリ)が使用されています。

一般の方からすると「T字の剃刀の方が安全じゃない?」と思われますが、T字の剃刀はL字の剃刀よりも皮膚にダメージを与えやすく、剃りにくいというデメリットがあるのです。

遺体によっては、剃刀を当てるだけで皮膚がズルッと剥けてしまうことがあるので、刃が当たる面積を減らすことは必須。

遺体の状態を綺麗に保つためにも、納棺師はL字の剃刀を使用しているのです。

感染症を防ぐためのゴム手袋

納棺師の化粧箱の中には、遺体からの感染症から納棺師を守る、ゴム手袋が納められています。

納棺師は遺体に触る仕事ですが、遺体によっては、血液や体液が身体の外に出てしまうことがあり、血液などでの感染リスクを伴います。

業務においてはいつ、どんな感染症にかかるかわかりませんので、手は必ず保護!
現場ではこまめにゴム手袋を交換し、仕事終わりには必ず手洗いを行っているのです。

点滴跡や小さなキズには傷口を塞ぐ塗り薬

納棺師は傷口や点滴跡を綺麗にカバーする塗り薬も持っています。

基本的には小さな豆粒大のものに使用され、病院での処置されたガーゼなどの代わりに使用。

塗った後が変色するようなこともないので、ガーゼを付けていた時よりも綺麗な状態に見せることができます。

目蓋を閉じたり、傷口を塞ぐためのガーゼ

ガーゼは遺体の大きな傷をカバーするために利用されます。

小さな部分は塗り薬で保護することができますが、大きな傷口となると体液が身体から滲み出てしまうこともあるので、ガーゼを使っての保護は必須。

また、ガーゼは目と目蓋(まぶた)の間に挟んで、遺体の目が空いてしまわないように目蓋のストッパーとしての役割を果たします。

傷口の処置などを保護する包帯

化粧箱の中には、ガーゼと共に包帯が入れられています。

包帯は他の道具よりも使用頻度が少なめですが、遺体の状態をよく見せるように使われたり、傷口を塞いだガーゼを見えなくするといった使い方がされています。

綿詰めや顔の表情を作るために利用するピンセット

納棺師は大小様々なピンセットを所持しています。

ピンセットの使い道は、鼻や口に綿を詰める時と、遺体の表情を整える際に使われ一般的な大きいのが特徴です。

メイクに合わせて使い分ける細い筆と太い筆

化粧箱の中には、遺体のメイク時に使う筆も入っています。

基本的には女性がメイクに使う時の筆と変わりませんが、遺体にはリップグロスなどでの口紅をしないため、唇専用の細い筆が用意されています。

女性が使うものよりも多色なファンデーション

納棺師と言えば、遺体へのメイクが代表的ですが、納棺師が持っているファンデーションは、女性が持っているものよりもカラーバリエーションが豊富です。

遺体の顔色は、亡くなった過程によってかなり変化しているので、生前の顔色に近づけるために、かなり濃いファンデーションを使うことも少なくありません。

遺体の顔色については、現場に行ってみないとわからないので、どのような顔色にも太陽出来るよう、納棺師は常に多色なファンデーションを化粧箱に備えているのです。

大きさによって使い方が違う綿

また、納棺師は現場に行く際、化粧箱と合わせて綿を持っていきます。

綿は大きさによって用途が変わるので、どのような違いがあるのかここで知っておきましょう。

小さな綿は耳や口、鼻への詰め物として使う

納棺師は小さな綿と大きな綿を使い分けています。

小さな綿は遺体の鼻や口、耳への詰め物に使われ、遺体の体液が外に漏れてしまわないよう、またコバエなどの小さな虫が、身体の中に入らないように使用されます。

体液は、一度身体の外に出るとかなり強い匂いを放つので、匂いを防ぐためにも綿を使うことは重要です。

遺体の首の高さ等を調整するために使う大きな綿

大きな綿は、小さな綿とは違い身体の外側に使われます。

首の後ろに丸めた綿を敷いて首の高さを調節したり、中には遺体のお腹の上に敷き詰めて、身体のラインを美しく見せたりといったことに利用されます。

遺体の首の位置が低いと、お腹に溜まった体液(腹水)が口や鼻などから溢れてしまうことがあります。

まとめ

納棺師が仕事現場に持っていく物には様々なものがあります。

一見するとあまり道具を持っていないように見えますが、化粧箱の中には様々なものが入っており、遺体の状態がどのようになっていても、その場で対応できるよう準備が整えられています。

中には意外な使われ方がされる物もありますが、全てが理にかなっていて無駄がない!
現在の納棺師の持ち物は、これまでの納棺師の英知が詰まったアイテム群と言えるでしょう。

ABOUT ME
おてさら君
お寺生まれの長男坊。『仏教は哲学』をモットーに仏教の面白さを世の中に伝えるべく日々自己鍛錬中。ミャンマーやスリランカといったアジア国で上座部仏教の修行経験、日本では納棺師の経験を経ています。自分の煩悩の強さを感じながら『職業は僧侶』ではなく、『生き方が僧侶』を目指し、宗派に属さずお寺と俗世間の間で偏りのない仏教に関する情報を提供中。
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