葬儀の前に行う納棺式では、亡くなった人(故人)が死後に困らないよう『旅支度』を行います。
旅支度は納棺式に行われる重要な行為で、納棺師や葬儀社、お坊さんが同席します。
旅支度の際には、納棺師や葬儀社の方が旅支度について説明をしてくれますが、内容があまり知られていないため、いざ旅支度をする際に何をして良いか分からず、余計な時間をとってしまうことも多いです。
そこで今回は、納棺式にて行われる「旅支度の内容と流れ」について紹介。
- 旅支度とは何か
- どの様な手伝いをするのか
- 旅支度の流れ
といった事を知ることができるので、「旅支度を円滑に行いたい」、「旅支度で慌てたくない。」「恥をかきたくない。」と言う方には最適の記事。
・旅支度とは
・旅支度で行う13のこと
・旅支度の流れ
目次
旅支度の意味とは
旅支度は納棺式の前に行われる行為です。
仏教では人が亡くなって生まれ変わるまでに、49日の期間があるとしています。
この49日の間に賽の河原や三途の川といった様々な場所を歩き、7日ごとに行われる全7回の裁判を終わらせることで、次に生まれる世界が決まります。
旅支度は亡くなった人がしっかりと49日を迎えて、無事にあの世へと行ける様に身支度を整えるものです。
逆さ事
逆さ事とは、生きている人と亡くなっている人の世界を区別するためにある考え方で、日常とは真逆の演出を行います。
旅支度では一つのマナーとして覚えておいた方が良いので、簡単に紹介させていただきます。
納棺式・旅支度に行われる逆さ事
・北枕(きたまくら)
北枕は、亡くなった人が横になる時に使われている枕位置。
そのため、生きている人は昔から北枕を避けています。
逆さ屏風
亡くなった人の枕元におかれる屏風は、絵柄が上下反対にしてあります。
縦結び
私たちが紐を結ぶ時は基本的に『横結び』ですが、亡くなった方に紐結びを使う場合は縦結びです。
左前
左前は基本的に衣装などに使われます。
亡くなった女性が衣装を着る場合は左前ですが、亡くなった男性の場合は右が前となります。
逆さ布団
亡くなった方に布団をかける場合は、布団を上下逆にかけます。
【納棺式】旅支度で遺族が故人に行う13のお世話とは
それでは旅支度の流れを紹介していきます。
実際の場面では納棺師や、葬儀社の方が進行していきます。
細かなタイミングなどは指示を仰ぎましょう。
- 足袋(たび)を履かせる
- 脚絆(きゃはん)を着ける
- 手甲(てっこう)をはめる
- 頭陀袋(ずだぶくろ)を渡す
- 数珠(じゅず)を両手の上に添える
- お柩(ひつぎ)に移動
- 白装束(しろしょうぞく)を着せる
- 天冠(てんかん)を頭横に添える
- 草鞋(わらじ)を足元に添える
- 杖(つえ)を利き手側に収める
- 布団(ふとん)をかける
- 副葬品(ふくそうひん)をお柩に収める
- お柩(ひつぎ)のフタを閉める
1.足袋(たび)を履かせる
足袋(たび)は、二股に別れた靴下の様な物です。
故人(亡くなった人)に履かせた後は、足袋についた紐を縦結びに縛ります。
右足と左足がありますので、基本的には2人で片足ずつ履かせることが多いです。
2.脚絆(きゃはん)を着ける
脚絆(きゃはん)は、スネ当てです。
左右のスネに結び付けて支度を行います。
脚絆(きゃはん)には縛りつける紐が2つづつ付いているので、片足に2人づつで支度を行うこともあります。
3.手甲(てっこう)をはめる
手甲(てっこう)は手の甲を守るための布です。
作られた輪っかに中指を通し、手首の位置で紐を結びます。
左手と右手に結び付けるため、2人で片手ずつ支度を行います。
4.頭陀袋(ずだぶくろ)を渡す
頭陀袋には六文銭(ろくもんせん)が入っています。
六文銭は大切な物であるため、頭陀袋(ずだぶくろ)に入れて故人のスーツの胸ポケットや、手と胸の隙間に持たせたりします。
六文銭(ろくもんせん)
六文銭は昔から三途の川の渡し賃とされてきました。現在では流通していない通貨のため、六文銭が印刷された紙が代用されています。
5.数珠(じゅず)を両手の上に添える
数珠(じゅず)は、葬儀社で用意してくれますが、故人が生前に使っていた数珠があれば、愛用の数珠を持たせるのが良いでしょう。
6.お柩(ひつぎ)に移動
布団に寝ている故人をお柩(ひつぎ)に移動します。
基本的には男性が主体となり、故人が寝ている布団のシーツを利用して、故人を包む様にお柩(ひつぎ)の中にそっと安置します。
7.白装束(しろしょうぞく)を着せる
白装束(しろしょうぞく)は実際に着せるのではなく、お柩に安置された故人の上にかける様な形をとります。
大きな物になりますので、納棺式に参列した人たちが全員触れる形で、ゆっくりと故人の体にかけてあげると良いでしょう。
8.天冠(てんかん)を頭横に添える
天冠(てんかん)は三角形の形をした白い布です。
昔は亡くなった人の額(ひたい)に結び付けていた物ですが、現在では顔の印象が変わって見えるといった理由から、頭の脇に添えることが主流となっています。
9.草鞋(わらじ)を足元に添える
草鞋(わらじ)はサイズの問題などで、実際に故人に履かせるといったことはありません。
2人で片方ずつの草履を故人の足元に添えて、足元の支度を完了させます。
10.杖(つえ)を利き手側に収める
杖は故人があの世に着くまで転ばない様にと、願いを込めて持たされるお守りの様な物です。
故人が生前に愛用していた杖を持たせることもできますが、金属製などの燃えないものは持たせることが出来ません。
11.布団(ふとん)をかける
故人の服装が整ったら最後に布団をかけます。
一番大きなものですので、納棺式に参列した人たちにできるだけ布団に触れてもらい、故人にかけてもらいましょう。
12.副葬品(ふくそうひん)をお柩に収める
最後に故人が生前に愛用していた品々や、遺族が最後に渡したい品をお柩に納めます。
副葬品にはお柩に入れて良いものや、入れてはいけないものが存在するので、事前にチェックしておく必要があります。
故人だけでなく遺族も納得できる様に、しっかりと見極めてお柩に納めましょう。
13.お柩(ひつぎ)のフタを閉める
全ての旅支度が終了したら最後にお柩のフタを閉めます。
最後に故人のご冥福を祈り、一礼する事を忘れない様にしましょう。
まとめ
納棺式の旅支度は、故人と遺族の最後の時間と言えます。
故人に触れる最後でもありますので、遺族のみなさん全員が旅支度に参加できる様に心がけ、故人のためにも心を込めて旅支度のお世話をしましょう。