仏教

仏教に縁ある7つの食べ物とその起源

日本には古くより様々な食べ物が誕生、海外から伝来してきました。食べ物の中には僧侶によって考案されたものや、僧侶に寄って日本に伝えられたもの、仏教に関わった名前のものもあります。そこで今回は食べ物から仏教に親しみを持っていただくため、仏教と縁(ゆかり)がある食べ物と名前の由来などを紹介していきます。

誰もが一度は聞いたことのある食べ物のみを紹介しますので、この記事を読んで仏教ウンチクネタにも活用していただきたいと思います。

仏教に縁ある7つの食べ物とその起源とは

 

  1. 肉食禁止で誕生『精進料理(しょうじんりょうり)』
  2. 隠元による『インゲン豆』
  3. 建長寺生まれの『けんちん汁』
  4. 沢庵が考案『沢庵漬け(たくあんずけ)』
  5. 高野山の特産品『高野豆腐(こうやどうふ)』
  6. 美味故に名付けられた『善哉(ぜんざい)』
  7. お釈迦様の遺骨と重なった『シャリ』

①肉食禁止で誕生『精進料理(しょうじんりょうり)』

精進料理は肉や魚といった生き物を一切使わない料理の事です。現在では多くのお坊さんが肉や魚を食べられていますが、仏教の戒律により一部の宗派を除いて明治時代まではお坊さんの肉食は禁止されていました。そんな肉食が禁止されている中、精進料理はお坊さんによるお坊さんのための料理として穀物や豆類などを上手に活用しながら発達していきます。

精進料理の精進とは、大乗仏教の根本的な教えである『六波羅蜜(ろくはらみつ)』の一つである精進から用いられた仏教用語であり、「前向きに努力(精進)すること」を意味します。

肉食が禁止されていた僧侶たちは精進料理を食べながら、日々努力する事を自分に意識付けていたのです。

②隠元が普及した『インゲン豆』

インゲン豆は1654年に黄檗宗(おうばくしゅう)の宗祖である中国の禅僧『隠元(いんげん)』が日本に来日した際に持ち込んだもので、隠元がはじめて日本に持ち込んだことから『インゲン豆』と名付けられたのです。

隠元は黄檗宗の精進料理である『普茶料理』の材料にインゲン豆を使用し、普茶料理と共にインゲン豆を普及していきました。ちなみに禅僧、隠元の命日である4月3日は『インゲン豆の日』と制定されていますよ。

③建長寺生まれの『けんちん汁』

けんちん汁は野菜やこんにゃく、豆腐が入った汁物。元々は臨済宗の建長寺(けんちょうじ)にいた僧侶、『蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)』が野菜入った汁物に豆腐を入れて煮込んだことが始まりとされています。

けんちん汁の由来は『建長寺で作られた建長汁』が、なまって『けんちん汁』になったという説と、黄檗宗の精進料理である普茶料理の『巻繊(けんちん)』(野菜と豆腐を炒めたものをベースに作る精進料理)がなまったという2つの説があります。

けんちん汁も歴とした精進料理。僧侶による工夫から生まれたけんちん汁は古くから一般家庭に広まり、愛されてきたのです。

④沢庵が考案『沢庵漬け(たくあんずけ)』

沢庵漬けは江戸時代に臨済宗の禅僧である『沢庵(たくあん)』が生み出した漬物です。沢庵が考案したことから沢庵漬けと名付けられましたが、沢庵漬けと名付けたのはなんと『徳川家光』。沢庵漬けが幅広い人々に食べられていたことがわかるエピソードですね。

ちなみに沢庵が創設した東海寺(とうかいじ)では沢庵漬けのことを『千本漬け』『保存漬けと呼ばれています。

⑤高野山の特産品『高野豆腐(こうやどうふ)』

高野豆腐は豆腐による保存食品で、正式名称は『凍み豆腐(しみどうふ)』。しかし真言宗の本山である高野山金剛峯寺の特産品として江戸時代から知られる様になったことから高野豆腐と名称されるようになり、全国的にも凍み豆腐ではなく高野豆腐の名称で人々に知られています。

高野豆腐の起源は、真冬の日に僧侶が豆腐を野外に出してそのまま放置し、しばらくして豆腐を取りに行ったところ豆腐がカチカチに固まって発見されたという、偶然による製法が起源となっている。この偶然生まれた製法の発見により、高野豆腐は今日まで高野山の特産品として日々人々に食されているのです。

高野豆腐の起源については他にも、弘法大師空海が中国から日本に帰国する際に携帯食品として所持し、持ち帰ってきたという説があります。

 

⑥美味故に名付けられた『善哉(ぜんざい)』

善哉(ぜんざい)は元々仏教用語で『素晴らしい』や賛成、賛同の意味を持った言葉として用いられてきました。善哉の名称由来は砂糖と小豆の入った汁物(現在の善哉)があまりにも美味しく、食べた僧侶が思わず「善哉!」と褒め称えたことから善哉と名称されるようになったと云われています。

善哉という言葉は一般的にはあまり馴染みがありませんが、仏教の宗派内で使われています。一般の場面で使われることは珍しいのできっと善哉が名称になるにあたってはかなりのインパクトを周囲に与えたでしょう。

⑦お釈迦様の遺骨と重なった『シャリ』

お釈迦様の遺骨を仏教用語では『舎利(シャリ)』と呼びます。この舎利は仏教の信仰対象の一部として世界中に分骨され、世界中の仏舎利塔に納骨されているのですが、分骨の場所があまりに多いため、一つ一つの舎利はとても微細な大きさになったと云われています。そのため微細な舎利の大きさや形を米粒に喩え、一つ一つの米粒を『シャリ』と呼称するようになったのです。

呼称については舎利=シャリだけでなく、お米を研ぐ際にシャリシャリと音が鳴ることからシャリと呼称されるようになったという説も存在します。

まとめ

食べ物の中には様々なかたちによって仏教との関わりを感じるものが存在します。ただ名付けられただけではなくしっかりした理由があるので、起源を知ると仏教のことや歴史の一部を学ぶことができます。

まだまだ知られていない食事の中にも仏教が隠れている可能性もありますので、はじめて食べる物と出会った場合は「もしかして仏教に縁があるかも。」と少し考えてみるのも楽しいですよ。ちょっと違った角度から食事を楽しんでみましょう。

ABOUT ME
おてさら君
お寺生まれの長男坊。『仏教は哲学』をモットーに仏教の面白さを世の中に伝えるべく日々自己鍛錬中。ミャンマーやスリランカといったアジア国で上座部仏教の修行経験、日本では納棺師の経験を経ています。自分の煩悩の強さを感じながら『職業は僧侶』ではなく、『生き方が僧侶』を目指し、宗派に属さずお寺と俗世間の間で偏りのない仏教に関する情報を提供中。
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